「中井第3鑑定」の対象は,「住友金属鉱山株式会社別子事業所東予工場」において1999年2月3日〜3月19日にかけて製造された25個のドラム缶の亜ヒ酸だった.同工場では,25個のドラム缶から少量ずつを,25個のプラスチック容器に試料採取した.そのプラスチック容器の亜ヒ酸は,事業所内にあるジョバン・イボン社(仏)製の分光分析装置で精密に分析された.
同年9月2日に,検察官指揮のもと検察事務官が同工場において,すでにサンプル採取を済ませ,その上,化学分析まで済ませてあった25個のプラスチック容器入り亜ヒ酸を領置し,段ボール箱に梱包し,手提げ鞄で和歌山地方検察庁へ持ち帰った.亜ヒ酸の領置は「住友金属鉱山で製造する亜ヒ酸のLot番号ごとの含有不純物等の鑑定を嘱託する目的」(確定審甲1298)だった.「中井第1鑑定」と同じ周長1.5キロメートルの巨大加速器で,中井教授はその25個のプラスチック容器の亜ヒ酸サンプルに含まれる不純物(具体的にはアンチモン元素)の定性的なパターンが同じか違うかを同年11月18日〜23日にかけて,「中井第3鑑定」として実施し,鑑定結果を裁判で証言した.
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「別子事業所東予工場」のフランス製分光分析装置で精密に化学分析されたアンチモン濃度値は確定審に提出されていたが,誰も注目しなかった.その不純物元素濃度を用いて「中井第3鑑定」における25点の亜ヒ酸の中井証言(確定審第1審第34回公判調書p.144)を甘めに採点してみると,25缶中の12缶で中井教授は間違えていた.正……
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(2023年02月14日公開)