連載 刑事司法における IT 利用の光と陰

刑事司法におけるIT利用の光と陰
第8回

裁判情報の公開(下)

指宿信 成城大学教授


4 裁判情報のオープンデータ化

 前回見たように、各国ではこれまで判例情報の一括的な公開・提供は民間によるNPOが担ってきました。

 ところが近時、政府・国の保有するデータへのパブリック・アクセスを保障しようという「オープンデータ化」の波によって、各国の公的機関による包括的な判例情報提供の仕組みが確立されるようになっています((裁判情報のオープンデータ化の意義については、町村泰貴「判決情報・訴訟記録の公開可能性とオープンデータ化」同編『民事手続の中の情報──情報化のジレンマに直面する手続法』(民事法研究会、2021年)参照。))。

 そうした判例情報のオープンデータ化の先頭を走っているのがイタリアです。もともとイタリアには法情報の電子的公開の長い歴史があります((イタリア法情報公開の歴史については、指宿信編著『インターネットで外国法』第12章[中村壽宏執筆](日本評論社、1998年)を参照。近時のイタリア法情報の調査法については、Elio Fameli & Francesco Fameli, “UPDATE: Italian Legal Research and Resources on the Web (last update at Dec. 2017)”, https://www.nyulawglobal.org/globalex/Italy1.html 参照。 ))。今日では、判例情報について利用者を制限しないオープンデータとしてインターネット上で提供しながら、利用者を限定した専門家向けのサービスを分離して提供する多層的な手法を取っています。

 前者が、最高裁が提供する「Sentenz……

(2023年01月18日公開)


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