「勾留理由開示」について、利用された方はなかなかいないのではないかと思います。実際に、勾留理由開示の請求件数は、2021年では全国で465件と非常に少ない数字です(2021年「司法統計年報」第17表)。実は、私も、勾留理由開示の手続を書記官として担当したことはありません。書記官になるための研修を受けているときに、何度か勉強のために見せて頂いた程度です。そのくらいレアな手続です。しかし、最近は、その重要性について弁護人にも理解されてきているようです。
勾留理由開示は、憲法34条の「要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」という条文を受け、刑事訴訟法82条に規定された制度です。同法84条1項で、裁判官が勾留の理由を告げることになっていますが、特に勾留した理由について詳しく述べるわけではなく、同法60条1項1号ないし3号のいずれに当たるのかを告げて終わる程度です。
また、弁護人が口頭で意見陳述をすることもありますが、刑事訴訟規則85条の3によりその意見陳述は10分以内に制限されている上に、裁判官がその意見陳述に対して応答するような義務もありません。したがって、後述するように、制度がうまく利用されないと、正直なところ、単なる「セレモニー」であるような印象は否めません。
では、勾留理由開示には、どのような意味があるかと言えば、直接的な実効性はほとんどなく、第一には憲法上の直接的な要請だからというのが本音なのかもしれません。
ただ、強いて挙げれば、納得の行かないような勾留がなされた場合には、勾留理由開示請求を適切に行うことで、裁判官によ……
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(2022年10月20日公開)