連載 刑事司法における IT 利用の光と陰

刑事司法におけるIT利用の光と陰
第4回

電子ファイル

指宿信 成城大学教授


1 はじめに

 2022年3月に公表された刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会「取りまとめ報告書」において、以下のような提案が示されました((https://www.moj.go.jp/content/001368581.pdf ))。

 「現行の法律・規則において紙媒体で作成・管理・発受することが予定されている『書類』等について、電子データとして作成・管理し、オンラインで発受することができるものとし、かつ、紙媒体による場合と同一の効力を有するものとする」。

 これを受けて、法制審議会においてこの6月に諮問が発出され、「刑事手続において取り扱う書類について、電子的方法により作成・管理・利用するとともに、オンラインにより発受すること」についての法整備が検討されることとなりました。

 こうした仕組みを「電子ファイル」と呼んでおきます。諸外国でe-filingなどと呼ばれているものですが、既に日本でも民事手続のIT化((「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案」
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00119.html ))の中で導入が決まっており、刑事もこれに続くこととなったわけです。

 今回はこの電子ファイルについて、その効用を諸外国の例を参考にしながら紹介するとともに、近年明らかになってきた裁判所システムや電子ファイルの脆弱性問題を指摘しておくことにします。

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(2022年09月21日公開)


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