刑事裁判で「ビデオリンク」や「遮へい」を利用する裁判があることをご存知でしょうか? 「ビデオリンク」は、別室にいる証人の尋問をテレビモニターを用いて行うもので(刑訴法157条の6)、「遮へい」は、法廷内の証人が被告人や傍聴人らとの間に衝立(遮へい板)を置いた状態で尋問を行います(刑訴法157条の5)。
例えば、ビデオリンク方式による証人尋問を採用するかどうかについては、条文上、「犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、法廷において供述すれば圧迫を受けて精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者」という限定が付されています(157条の6Ⅰ③)。したがって、本来的には、ビデオリンク方式や遮へい板の利用は、例外的な場合に限定されるべきでしょう。しかし、私が担当していた暴力団関係の刑事事件において、かなり多くの証人について尋問をすることになり、そのほとんどでビデオリンク方式が採用されていたことがありました。しかし、いくら暴力団関係の事件とは言え、あまりに安易に利用され過ぎているのではないかと危惧することもありました。一方で、小さい子どもの性被害事件など、ビデオリンクや遮へいが非常に有効となる場合もあり、そのような場合には積極的に利用すべきだと思います。
実は、これらのビデオリンク方式や遮へいは、書記官としては、「あまりしたくない」というのが本音でした。ビデオリンクについては、機器の不具合が生じることが怖いですし、そうならないように何度も事前にテストをしたりしなければならないからです。尋問の途中で通信が途絶えてしまうこともあり、その場合は、いったんすべての機器を止めて再起動しなおさなければいけ……
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(2022年07月04日公開)