前回のコラムでは、刑事手続の中で、多くの障害のある人に出会うことがあることについてお話しました。こうした人たちは、刑事手続の中でも、その他の人が刑事手続を経験する場合と比べて、多くの困難に直面しています。
例えば、障害のある方の中には、五感の感覚が過敏な方がいます。留置施設の中では、常に収容されている人の様子を観察できるように、照明をあまり落とさないこともあります。感覚過敏の場合、照明を当てられ続けたら、留置期間が非常に辛いものになってしまいます。あるいは、精神の障害を抱えている場合に、留置前に服用できていた薬が処方されなくなったら、精神症状は当然悪化してしまいます。
刑事裁判でも、法律の教科書に書かれたような難しい専門用語で質問を受けたらどうでしょうか。知的能力に障害がある場合、難しい言葉の理解が難しく、ときには自分がどのような状況に置かれているか理解することさえ、難しくなってしまうかもしれません。
これらは、留置されていたり、刑事裁判にかけられてしまっていたりする立場である以上、仕方がないことなのでしょうか。むしろ、それぞれの障害に応じた適切な配慮がなされなければ、その人が本当の意味で裁判を受けたりする権利が保障されたとは言えないのではないでしょうか。
実は、障害のある人を取り巻く法制度の中では、刑事手続において、捜査機関等が障害を踏まえた「合理的な配慮」をしなければならないことを義務づけているのです。今回のコラムでは、このことについてみていきましょう。
2 条約で認められた障害のある人の権利障害の……
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(2022年05月10日公開)