責任能力が問題となる事件の弁護活動のあり方を検討するには、精神科医の協力が不可欠である。精神鑑定書の読み方一つとっても、弁護人には理解が難しい。複数の精神科医から意見を聴くことで、理解を深めることができる。また、尋問のあり方についても、尋問を受ける証人(鑑定人)の立場からの意見を聴くことで、尋問のあり方を検証することができる。このような問題意識から、日本弁護士連合会では、日本司法精神医学会・精神鑑定と裁判員制度に関する委員会の協力のもと、定期的に協議会を開催してきた。そこでは、責任能力が争われた事件の弁護人を招いて、精神鑑定と弁護活動を報告してもらい、精神科医と弁護士による共同検討を行ってきた。
本書では、上記協議会の成果をとりまとめたもので、責任能力が争われた裁判員裁判10ケース(統合失調症圏、気分障害圏、物質関連障害・飲酒酩酊、発達障害)を取り上げている。
一つのケースについて、それぞれ、担当弁護人による事例報告、精神科医と弁護士のコメント、判決書の抜粋が収められている。ときには意見が対立することもあるが、一つの事例について、異なる視点からの分析が加えられることにより、事例をより深く理解することができる。
【第1部】 統合失調症圏 |
(2019年11月15日公開)